4 コロイドh 【コロイド】 コロイド粒子 食塩水などの溶液は,溶質粒子は溶媒分子とほぼ同程度の大きさをもち,溶質は溶媒に溶け込んでいる。このような溶液を真の溶液という。一方,直径〔 10−9 〕m〜〔 10−7 〕m程度の比較的大きな粒子を〔 コロイド粒子 〕といい,コロイド粒子が液体中に均一に分散したものをコロイド溶液という。コロイド溶液ではコロイド粒子を分散(溶解しているのではない)させている液体を分散媒,分散しているコロイド粒子を分散質という。またコロイドの中で流動性のあるものを〔 ゾル 〕,流動性がなく半固体状のものを〔 ゲル 〕,これを乾燥させたものを〔 キセロゲル 〕という。 例)豆乳:ゾル 豆腐:ゲル 高野豆腐:キセロゲル |
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コロイド粒子の分類 デンプンやタンパク質のような高分子化合物は分子1個でコロイド粒子の大きさをもつ。このようなコロイドを〔 分子コロイド 〕という。 セッケン分子は親水基(水に溶けやすい部分と)と疎水基(水に溶けにくい部分)からなり,溶液中では疎水基を内側に,親水基を外側に向けるようにして,50〜100分子集まってコロイド粒子をつくる。このようなコロイドを〔 会合コロイド 〕または〔 ミセルコロイド 〕という。 |
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硫黄,炭素,粘土などの不溶性物質は,コロイド粒子の大きさになって分散している。このようなコロイドを〔 分散コロイド 〕という。 【コロイド溶液の性質】 透析 沸騰水に少量の塩化鉄(V)FeCl3の飽和水溶液を加えると,次のような反応が起こり,赤褐色の水酸化鉄(V)Fe(OH)3のコロイド溶液が得られる。Fe(OH)3は集まって一部でOHとOHの間でH2Oがとれて結合しコロイド粒子となる。 〔 FeCl3 + 3H2O → Fe(OH)3 + 3HCl 〕 このようにしてつくったコロイド溶液には,Fe(OH)3のコロイド粒子のほか,不純物としてH+やCl−が含まれる。この混合物をセロハンのような半透膜に包んで純水につけておくと,H+やCl−は膜を通って水中へ拡散していくが,Fe(OH)3のコロイド粒子はセロハンの穴よりも大きいので水中へ出ていけない。このように,半透膜を利用してコロイド溶液中の不純物を除く操作を〔 透析 〕という。 |
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<補足> セロハンの外側の水に〔 硝酸銀 〕水溶液を加えると,〔 塩化銀 〕が生成し白濁することから〔 Cl− 〕の存在を,〔 メチルオレンジ 〕を加えると赤色に変化することから〔 H+ 〕の存在を確認することができる。 チンダル現象 コロイド溶液に横からレーザー光線などの強い光を当てると光の通路が明るく輝いて見える。この現象を〔 チンダル現象 〕という。これはコロイド粒子が大きく,その表面で光がよく〔 散乱 〕されるためである。それに対し通常の溶液では溶質粒子がずっと小さいため,光はほとんど散乱されない。 |
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ブラウン運動 コロイド溶液を限外顕微鏡で観察すると,コロイド粒子そのもの自体は見えないが,コロイド粒子は小さな光の点としてその存在が観察できる。このとき光の点は不規則なジグザグ運動をしているのが分かる。このコロイド粒子の動きを〔 ブラウン運動 〕という。これは〔 熱運動 〕をしている溶媒分子が絶えずコロイド粒子に衝突するために起こり,このためコロイド粒子は沈降しない。 |
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電気泳動 |
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疎水コロイドと凝析 水との親和力の弱い(表面に水分子を引き付ける力が弱い)コロイドを〔 疎水コロイド 〕という。疎水コロイドは〔 電気的反発 〕によって溶液中で沈殿することなく安定に分散を保っている。 疎水コロイドに少量の電解質を加えると,帯電していたコロイド粒子にそれと反対符号のイオンが強く引きつけられ,コロイド粒子の帯電が電気的に中和される。そのため,これまでの反発力がなくなり,分子間力が大きくなるため,コロイド粒子は互いに結合して沈殿する。このように少量の電解質で沈殿する現象を〔 凝析 〕という。 コロイド粒子を凝析させる力は,加えた電解質から生じるイオンの価数により異なる。すなわち,コロイド粒子と反対符号のイオンで価数の大きいイオンほど,凝析させる能力が大きくなる。例えば,正コロイドであるFe(OH)3に対しては〔 Cl− 〕より 〔 SO42− 〕を含む電解質の方が有効である。 |
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親水コロイドと塩析 デンプンやゼラチンなどのコロイド溶液は少量の電解質を加えても沈殿しない。これらのコロイド粒子は,〔 親水コロイド 〕といわれ,その表面に水分子を強く引き付けている。そのため,親水コロイドを沈殿させるためには,多量の電解質を加え,表面の水分子を取り除かなければならない。このように,親水コロイドが多量の電解質によって沈殿する現象を〔 塩析 〕という。豆腐のにがりなどが塩析の例である 保護コロイド 疎水コロイドに親水コロイドを加えると,疎水コロイドの粒子が親水コロイドの粒子に取り囲まれ,凝析しにくくなる場合がある。このような保護作用を行う親水コロイドを〔 保護コロイド 〕という。例えば,墨汁は疎水コロイドで不安定な炭素のコロイドに対して,親水コロイドであるニカワを保護コロイドとして加えてある。 例題 次の (1) 〜 (5) の記述に該当する現象や操作名を記せ。 (1) コロイドに強い光を当てると,光の通路が輝いて見える現象。 (2) 直流電圧をかけたとき,コロイド粒子が電極に向かって動く現象。 (3) 半透膜を用いて,コロイド粒子と他の分子やイオンを分離する操作。 (4) 親水コロイドの溶液に多量の電解質を加えて沈殿させる操作。 (5) コロイド粒子が分散媒分子に衝突されて起こる不規則な運動。
例題 次の文中の( )に適語を入れ,下の各問いに答えよ。 @塩化鉄(V)水溶液を沸騰水中に入れると,水酸化鉄(V)のコロイド溶液が生じる。この溶液をセロハン袋に入れ,蒸留水中に浸しておくと前よりも純度の高い溶液が得られる。この操作を(
ア )といい,このときのセロハン袋の外の水溶液は( イ )性を示す。操作後のコロイド溶液の一部をとり,A少量の電解質水溶液を加えて放置すると沈殿が生じる。この現象を( ウ )という。この現象が起こりやすいことから,水酸化鉄(V)のコロイドは( エ )コロイドといえる。 また,水酸化鉄(V)のコロイド溶液に直流電圧をかけるとコロイド粒子は陰極側に移動するので,このコロイドは( オ )に帯電していることがわかる。 (1) 下線部@の変化を化学反応式で示せ。 (2) 下線部Aで,同じモル濃度の電解質水溶液のうち,最も少量ですむものはどれか。1つ選び,記号で答えよ。 @ KCl A MgSO4 B AlCl3 C Na3PO4 (ア) 透析 (イ) 酸 (ウ) 凝析 (エ) 疎水 (オ) 正 (1) FeCl3+3H2O→Fe(OH)3+3HCl (2) Fe(OH)3は陰極に移動するので,正のコロイド。 −で価数の大きなイオンが出るもの @ Cl− A SO42− B 3Cl− C PO43− C <溶液の調製と濃度に関する例題> |
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1 次の各問いに答えよ。H=1.0,C=12,O=16,Na=23,S=32 (1) 尿素5.0gを水45gに溶かした水溶液の質量パーセント濃度は何%か。 (2) 10%の塩化ナトリウム水溶液180gと20%の塩化ナトリウム水溶液120gを混合した水溶液の質量パーセント濃度は何%か。 (3) 9.0gのグルコースC6H12O6を水に溶かして200mLにした水溶液は何mol/Lか。 (4) 0.25mol/Lの水酸化ナトリウムNaOH水溶液200mL中に,NaOHは何mol含まれるか。また,含まれるNaOHの質量は何gか。 (5) 0.10mol/Lの硫酸水溶液100mLと0.30mol/Lの硫酸水溶液300mLを混合した水溶液のモル濃度は何mol/Lか。 (1) 10% (2) 14% (3) 0.25mol/L (4) 0.050mol/L 2.0g (5) 0.25mol/L 2 次の各問いに答えよ。H2SO4=98,HCl=36.5 (1) 0.20mol/L硫酸水溶液(密度1.05g/cm3)の質量パーセント濃度は何%か。 (2) 濃度36.5%,密度1.2g/cm3の濃塩酸HClのモル濃度はいくらか。 (3) 10%濃硫酸水溶液を用いて,0.50mol/Lの水溶液を100mLつくりたい。10%硫酸水溶液は何g必要か。 (1) 1.9% (2) 12mol/L (3) 49g 3次の各問いに文字式を用いて答えよ。 (1) 質量パーセント濃度がP〔%〕の硫酸水溶液の密度がd〔g/cm3〕であった。この硫酸水溶液のモル濃度は何mol/Lか。ただし,硫酸の分子量をMとする。 (2) 分子量Mの物質を水に溶解させ,モル濃度c〔mol/L〕にした水溶液がある。水溶液の密度をd〔g/cm3〕として,この水溶液の質量パーセント濃度を求めよ。 (1) 10dP/M (2) cM/10d |
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